総評
ファミコン探偵倶楽部シリーズの約35年ぶりとなる完全新作となる本作は、映像表現の進化によりかなり臨場感の高い体験ができたと思います。キャラクターの動きや表情も豊かでリッチなアドベンチャーゲームという印象でした。しかし、全体的に物語の起伏が少なくイマイチ盛り上がりに欠ける面もありました。淡々と知っている情報を収集している場面も多いので、過去2作品と比較しても推理し甲斐のなさも少し残念だと感じています。
おすすめポイント
タイトル名 | ファミコン探偵倶楽部 笑み男 |
発売日 | 2024年8月29日 |
ジャンル | アドベンチャーゲーム |
対応機種 | Nintendo Switch |
発売元 | 任天堂 |
クリア時間 | 約15時間 |
2024年7月10日、任天堂から「笑み男」とタイトルの付けられた短い一本の動画が公開されました。
私は「任天堂の新規IPか!?しかもホラー系??」と胸を躍らせましたが、実際はファミコン探偵俱楽部の約35年ぶりの完全新作でした。
ファミコン探偵倶楽部シリーズはSwitch版のリメイクから入った新参者ではありますが、魅力的なキャラクターや綿密なシナリオに虜になった一人なので、完全新作と聞いてそれはもう嬉しかったです。
さて、そんなファミコン探偵俱楽部シリーズ最新作の本作は、タイトル通りゲーム内で都市伝説となっている「笑み男」がキーとなる物語です。
現代で起きた事件と18年前の未解決事件、そして都市伝説「笑み男」が絡む物語はどんな真相が待ち受けているのかワクワクしながら進めることができました。
期待が大きかっただけに残念な部分もありましたが、真相を見届けて数日間はかなり余韻に浸っていたので記憶に残った作品であることは間違いないです。
では、よかったところ、気になったところに分けてレビューをしていきたいと思います。
なお、レビューはできる限り物語的な部分には触れないよう心がけて行っています。
よかったところ
臨場感を高める映像表現
映像はSwitch版リメイクの2作品より進化していると感じました。
映像といっても、従来のファミコン探偵倶楽部シリーズの流れを汲んで進行は基本的に一枚絵の静止画ではありますが、キャラクターの髪がなびいていたり、仕草や表情なども豊かになったという印象です。
移動中の車内も背景の描写がしっかり描かれており、まるで自分がそこにいるかのような体験ができました。
それと、過去2作品もそうだった記憶があるのですが、BGMの使い方もメリハリがあって素晴らしかったですね。
曲が止まった時は、「ここは重要なシーンなんだな」と思うのと同時に、シリアスなシーンであることも多かったので緊迫感が高まり、手汗が止まらなかったです。
その他、周りを見る際にインタラクトできる箇所が細かく、反応が面白いものも多いので遊び心を感じれた点も好きでした。
誘導が丁寧でわかりやすい
見出しの通りですが、調査パートの誘導が丁寧で迷うことなく進めることができました。
ファミコン探偵倶楽部シリーズのような推理もののテキストアドベンチャーで行う調査ってどこを調べればよいのかわからなくて、総当たりで話を聞いたり周りを調べたりして30分以上かけてやっと話が進んだみたいな経験が私にはあります。
本作ではそのようなことは一切なく、移動も必要最小限に抑えられており、何を聞けばよいかなどは上の画像の通り、テキスト色が変わった形で表示されます。
自分でインタラクトしてみる醍醐味が減少してしまった寂しさもないことはなかったですが、ストレスもなく快適に遊べたことは確かです。
過去2作品の小ネタが存在する
本作はファミコン探偵倶楽部シリーズ3作目(サテラビューで配信された「雪に消えた過去」も含めると4作目)となる作品で、作品内の時系列的には「消えた後継者」より2年後の世界が舞台となっています。
よって、各所に過去作の小ネタ要素や人物名が出てきたりと、過去作をプレイ済みだとわかる嬉しいファンサービスがありました。
私が特に嬉しかったのは、電話ネタです。
これは携帯電話に同シリーズの別作品に登場した電話番号を打ち込むことによって特別な会話を見ることができるといったもので、過去作品にも存在した小ネタです。
「うしろに立つ少女」で登場したサンボラというお店の番号(007-1234)にかけると、同作品に登場したキャラクターの河合ひとみが電話に出てくれてやり取りを見ることができます。
更に本作では、空木探偵事務所に所属するもう一人の探偵助手であるあゆみちゃんで調査するパートもあります。
あゆみちゃんで電話を掛けた際のやり取り内容も主人公とはまた違っていて面白いので、まだ見ていない方はぜひ試してみてください。
過去作の小ネタ要素はありますが、わかれば嬉しい程度に入っているだけなので、過去作を遊んでいなくても本作の面白さを損なうということは決してありませんので、ご留意くださいね。
気になったところ
起伏が少なく盛り上がりに欠ける
終盤、具体的には終章までこれといって大きな展開を迎えることなく進みました。
調査パートで淡々と情報を収集し、推理して情報整理を行うのみです。
それも、既に知っている情報を手に入れるだけで調査を終える日もあったので、もどかしい気持ちになったりもしました。
終盤になるにつれて重要そうな情報や息をのむカットシーンも増えましたが、それでも物足りなさ故に終章という文字を見たときは驚いた記憶があります。(このペースだと+5章くらいあるだろうと思っていたので。。。)
遊んでいて辛いとまでは言いませんが、退屈な時間を過ごすことが多かったです。
とはいえ、今回起きた事件と18年前の未解決事件に都市伝説を絡めた事件の背景は過去シリーズよりも濃く、クライマックスの盛り上がりは間違いなく楽しめました。
クライマックスで語られる「笑み男」となった人物の狂気的な人生はゾワゾワしましたし、何とも考えさせられる結末でいたたまれなくなりましたね。
推理し甲斐のなさ
「推理し甲斐のなさ」と表現すると、推理が簡単な印象を持たれるかもしれませんが違います。
むしろ、私にとっては推理が難しかったと表現すべきなのかもしれません。
終章に入ってもなお、多くの謎が残されている状態で推理しようにも事件の背景や繋がりが断片的にしかわからない、といった状態でした。
しかし、全ての真相を知ってから改めて推理すると断片的だった情報が全て繋がりますし、終章入った時点でも推理できなくはなかったのかな?と思っています。
個人的な意見になりますが、人物同士を見比べてアレコレ推理するのが好きなので、もう少しミスリードさせるようなフレーバーがあればより楽しめたなと感じています。
主人公のモラルを欠いた言動
これは私だけなのかもしれませんが、主人公の言動に気になる点がありました。
例えば、事務所への留守電を残すシーン。
主人公である探偵君は調査上のコミュニケーションを円滑に進めるために携帯電話を所持しているのですが、コマンドの選択肢の一つとして主人公の所属している空木探偵事務所に電話をかけることができます。
探偵事務所のメンバーは事件の調査に出払っているわけですから、もちろん事務所にかけても留守電になるだけです。
そこで、主人公は留守電を使っていたずらに伝言を残すのですが、あろうことか世間を賑わしている笑み男を名乗って留守電を残します。
声優さんの演技もあってかなり笑った要素の一つではありますが、今回の事件の犯人である可能性のある笑み男をイタズラに使うのはそれを調査する探偵の言動として少し違和感がありました。
とはいえ、本作の各所に盛り込まれているユーモアはギャグは個人的にどれも面白いものばかりで、事件の内容が重いだけに良いアクセントになっていたと思います。
終わりに
「ファミコン探偵倶楽部 笑み男」のレビューをしてきました。
あのファミコン探偵倶楽部シリーズの完全新作ということで、かなり、かなーーーり期待していただけに物足りなさはあります。
しかし、「笑み男」という都市伝説を絡めたお話は結末としては面白かったですし、映像表現の高さも相まって恐怖に引き込まれました。
兄弟もしくは姉妹への愛情が高いほど、強烈に何かを考えさせられ共感を受けるようなストーリーになっていると感じています。
私にとっても刺激的でインパクトを受けた作品でした。
大好きなシリーズなので、本作を足掛かりにこの先もシリーズ作品が出続けてほしいなと思います。
ファミコン探偵俱楽部 笑み男 -Switch
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